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南トルコ・アンタルヤの12ヶ月*** 地中海は今日も青し

南トルコ・アンタルヤの12ヶ月*** 地中海は今日も青し

 (11)続・続々・父兄懇談会


《9月―頭の痛い季節》 ~2003年9月の記録

 ∬第11話 続・続々・父兄懇談会

教科書の注文を巡って、ひとりの父親から辛辣な、しかし実に的を得た意見が出された。

販売所ではあれも足りないこれも品切れと言うばかりか、先生が先日紹介した本はこちらでは扱っていないし、注文も受けていないと言う。いったいどうなっているのか。
口で言うばかりでなく、必要な教科書は書名をリストにして渡すべきではないか。
先生は、足りない本が何冊か取りまとめをして、それをもとに発注し、集金すればいい。

まことにごもっとも。まさに日頃私が口にしたくてもスパッと言えなかったことばかり。物言いは少々厳しいものの、良くぞ言ってくれたと、思わず後ろを振り返ってみた。
私たちは学校の始業前から何度も販売所に足を運び、指定の本が入荷されるや購入したからまだ良かったものの、遅くなって買いに行った父兄は、あれもない、これも品切れと言われて、市中の書店をはしごして捜し求めたりしたらしいのだ。

考えてみれば、各学年の生徒の人数はあらかじめわかっているのだから、少なくともそれに該当する数の本を発注しておくのが当たり前。そうすれば、足りないなんていう事態が発生することもなかろう。
また少なくとも、販売所に届いた教科書の内訳をあらかじめ教師がチェックしていさえすれば、発注ミスもすぐ判明するし、発注した本と違うものが販売されることも未然に防げるはずだった。

先生は少し困り顔。ビジネスの世界ではごく当たり前のことでも、学校の教師にはそのような事務は慣れていないのだろう。また、時間外の労働につながることは、たとえ必要であれなかなか実行する気が起きないだろうから。
実は数日前、各生徒のノートの裏に自宅の電話番号を記入し、足りない教科書についてはこちらまで電話で知らせてくれるように、と生徒に説明して帰らせたのを私は知っていた。
娘を迎えに毎日教室に出向いている私は、教師からそう口頭で聞かされたので、電話番号の意味も分かっていたのだが、ほとんどの父兄にその意図は伝わっていないはずだった。

この指摘を受けて、ようやく教師は手書きながら必要な教科書のタイトルと著者名を書いたリストをコピーし、生徒に自宅まで持ち帰らせるという方法を覚えたのだった。
リスト上で足りない本に印を入れさせ、それを回収して発注したようで、1週間ほど後に無事各生徒の元に足りない本が届いたのだった。

先ほどと同じ父親が、無制限に買い食いする生徒を野放しにしている状況に問題を提起した。

その話は娘からも聞かされていた。休憩時間に売店でポテトチップスやチョコレート、ガムやキャンディー、その他ありとあらゆる駄菓子を買ってきては食べる生徒がいるのだと。
これに対しては教師も問題視しており、生徒にも繰り返し注意しているのだそうだが、父兄からの監督注意が不可欠なのは言うまでもない。なにより、1年生に多量の買い食いが出来るほどのお金を持たせること自体、間違っている。驚いたのは、中には5ミリオン、10ミリオンという大金を持たされている生徒もあるということだった。

娘には、毎日500cc入りのペットボトルに水を詰めて持たせてやるのだが、時々足りなくなってしまうので、せめて水を買うお金が欲しいと娘に哀願され、夫とも相談して、我が家は水の代金として30万だけ財布の中に入れておいてやることにしていた。
ある日、50万リラ札を入れておいてやったところ、夕方迎えに行ったとき、お釣りの代わりに娘がローリーポップ(チュッパチャップス型の棒付きキャンディー)を出してきたことがあった。娘を問い詰めると、小銭が切れているからと代わりに渡されたとか。
憤慨して売店に押しかけると、悪びれるでもなく、他のものがよければ変えるよ、と言うのだった。

子供にお金の大切さや正しく計算する術を教えるべき学校の売店で、そんなずる賢い応対をすること自体に問題がある。もし同じ生徒が1日に何度も、しかも大量に菓子類を買いにやってくるとしたら、時には売らないで諌めるくらいのことは本来すべきではなかろうか。
学校からは独立した一業者であれ、学校側がこの点で目を光らせる必要性は十分あった。

日本の常識や教育観を引きずったまま、学校や教師の質を評価しようとする私にも無理があるのは十分承知。
しかし、実際このように、学校生活の端々にまで問題の種が隠れている状況では、親としてまったく油断がならないのだった。

(*当時、10万リラ=約8円)

 つづく

∬第12話 学校探し、再び




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